JN4JXLの業務日誌

2020年1月に3アマを取得し、開局したビギナーハムの業務日誌です

導電性フィラメントでアンテナ作ってみた

3Dプリンターを入手してから、いろいろなフィラメントについて調べているうちに導電性フィラメントを見つけました。 詳しく見てみると、安価な導電性フィラメントは抵抗値が高く、アンテナが作れるほど抵抗値の低いフィラメント (Electrifi) は約2万円/100gと非常に高価でした。

そんな高価なフィラメントは買えないので、安価なフィラメントで出力したアンテナが機能するのか、実験してみました。

導電性フィラメント入手の経緯

最近、アマチュア無線界隈ではカーボン製釣竿をそのままアンテナエレメントとして使うのが流行っています。 しかし、今まではカーボン製釣竿はワイヤーエレメントに影響を与えるので良くないとされ、グラスファイバー釣竿が使われていました。 まさかカーボン製釣竿がそのままエレメントとして使えるとは思われていなかったのでしょう。

ここでふと、カーボンファイバーも単体ではそこそこ抵抗値が高いがアンテナとして機能しているなら、ひょっとしたら導電性フィラメントでもアンテナ作れるんじゃないか?やってみないと分からないよね?と考えました。 そんな折に、レビューを条件に導電性フィラメントをご提供いただけるNature3Dさんのフィラメント無料配布キャンペーンを発見したため、今回応募してみました。

nature3d.net

EV03S の紹介

という訳で、ご提供いただいたのは、Nature3DさんのEV03Sという導電性フィラメントです。

nature3d.net

フィラーにはカーボンブラックが使われていて、体積抵抗率は 30Ω・cm とそんなに高くないものの、表面抵抗率は 10kΩ/□ とちょっと高いように感じました。 Nature3Dさんからも「アンテナには向かないかも…」と言われましたが、とりあえず作って実験してみましょう。

リフィル用のため、別途出力したリールにセットします。

ノズル交換

ノズルは極力新品を使い、専用にした方が良いということでしたので、予備でついていた新品ノズルに交換しました。

Aquila S2 のノズル交換方法はマニュアルにも載っておらず、よく分からなかったので試行錯誤の様子を動画にまとめました。

で、動画の最後で出力しているのが、今回試す1200MHz用のBiQuadアンテナです。

出力してみての感想

推奨条件の真ん中の値を取って、ホットエンド: 240℃、ヒートベッド: 90℃ で出力しました。 特にノズルが詰まったりヒートベッドから剥がれることもなく、素直に印刷できたと思います。 ただ、少しフローが落ちるのか、細かいところが充填されず隙間が空いたようになってしまいました。

いくつか出力したので、一つ折り曲げて破壊試験をしてみましたが、パキッと折れる感じではなく、折り目がつく感じでした。 また、おそらくカーボンフィラーのせいで積層間はすこし剥がれやすいようです。何度か折り曲げていると破断しましたが、そこから層をぺりぺりと剥がすことが出来ました。

性能チェック

出力後、さっそく給電部間の抵抗値を測ってみましたが、40kΩとかなり高いです。

反射板にセットし、同軸ケーブルを接続してみました。

NanoVNAでSWRも測ってみましたがやはり良くないです。

DJーG7に接続して、恐る恐る電波を出してみると、電界強度計の針がわずかに振れます。 一応電波は出ているようですが、かなり弱いです。 同じ位置から1.6mm銅線で作ったBiQuadで送信するとメーターを振り切りました…

まとめ

というわけで、残念ながら導電性フィラメントはアンテナの素材としては適していないということが確認できました。 そりゃ、そうでしょ。と思うかもしれませんが、先のカーボン製釣竿のように、適さないと思っていたものが実は有用だったということも十分あり得るのと、やはりアマチュア無線技士としてはちゃんと実験して確かめることが大切だなと思いました。

また、導電性フィラメントで有効なアンテナを作ることはできませんでしたが、導電性塗料を使って3Dプリンターでアンテナを作るプロジェクトを別途進めています。 いくつか良い結果が得られているので、そのうちブログにまとめようと思います。

おまけ

せっかく頂いたものなので、他にもアマチュア無線関係のものが導電性フィラメントで作れないかなと考えたところ、タッチセンサーのタッチ部分としての実績はあるようなので、エレキーパドルを作ってみることにしました。

マイコンにSeeeduino XIAO を使用し、適当にタッチセンサーの作り方の記事を参考にして、作ってみました。 とりあえず作ってみたレベルなので、縦振れとしてしか使えないですが、エレキー機能は作ったことあるので、可動部のないパドルはすぐ作れると思います。

他にも、導電性を活かしたグッズが作れないか、考え中です。